LRT整備費
宇都宮市のLRTを参考に、1km当たりの整備費を40億円として試算
整備費は1kmあたり40億円
「宇都宮ライトレール」が2023年8月26日に開業。国内では75年ぶりの全線新設(14.6km)のLRTとなったため、導入をめざしている諸都市にとって大変参考になります。整備費は684億円ですが、これには鬼怒川架橋(643m)や、高架橋、地盤改良などのコスト変動要因が含まれています。これらの要素を差し引いて、1kmあたりの整備費を40億円として試算しています。
【参考データ】
大都市には地下鉄・モノレール等の大量輸送システムが導入されていますが、1kmあたりの整備費は、地下鉄が約300億円、モノレールが約150億円と言われ、地方都市には不向きです。LRTは整備費が安いうえ、地下や橋上に移動することなく地上で乗降できる利点があります。
上下分離方式で整備
LRTの整備は、「施設の建設・維持管理」と「運営」を分ける公設民営の上下分離方式がとられています。道路の改造や停留場・レール・LRT車両・車庫の整備等は公(市など)が行い、整備費にはこれらのすべての費用が含まれます。運営や運行は民間の軌道事業者等が行い、施設の使用料を支払う仕組みになっています。
上下分離方式(宇都宮市・波賀町資料より)
三方原本線で試算
宇都宮市の場合、LRT整備事業基本計画が策定されてから開業までに概ね10年を要しています。浜松市が今取り組んだとしても、最初の三方原本線が実現するのは2030年、全路線の実現は2040年頃と想定しています。そこで、事業費は三方原本線で試算を行っています。
市の実質的な負担は約335億円
三方原本線の総事業費は約670億円を想定しています。国からの補助(1/2)が見込めますので、市の実質的な負担は335億円程度で整備できることになります。
年18億円の負担でLRTが実現
LRTは「膨大な費用がかかるのではないか」と、懸念されるかも知れませんが心配は無用です。20年で返済する場合、毎年度の負担は18億円程で済みます。市の予算は3,960億円(R4年度)ですから、05%弱の負担で済むため、財政的には問題がないと思います。
宇都宮市との比較
宇都宮市のLRT開業が近づいてきたことから、各種貴重なデータが入手できるようになりました。宇都宮市のLRT収支計画は、年間1億5千万円の黒字を見込んでいます。毎年度の返済額は13億円を見込んでおり、市の予算規模から何ら問題のないことを公表しています。なお宇都宮市の負担額の(80億円)は、波賀町の負担額です。
浜松市と宇都宮市の財政比較
全路線の整備費
現時点の整備費で試算すると、全路線を整備するには約1,800億円が必要となります。国の1/2補助により実質的な市の負担は約900億円程度となりますが、それにより脆弱であった公共交通の基盤を整備し、LRT沿線集約型のメリハリの効いたコンパクトシティを実現することができます。
【参考データ】
浜松市は行革と経費削減により、5,493億円(2007年度末)あった市債残高を4,317億円(2022年度末)まで削減しています。15年間で1,176億円削減したことになります。そのうちの1/3を「LRT三方原本線」の整備に充てていれば、今頃は宇都宮市のようなLRT先進都市が実現していたことになります。